エリート同期のプロポーズ!?
「何すん……」


「キスぐらいするでしょ、彼氏と」


「…………」


そうね。彼氏ね。


……って、そんな簡単にいくかっての……。


「ごめん。帰る」


卑怯かもしれないけど、これ以上顔を見て話せない。


怒っているのか、恥ずかしいのか、嫌なのか、気まずいのか。


自分でも何でなのか分からないけど、ここには居られない。


絢斗君を好きになるって決めたのに。


急いで席を立ち、何歩か進んでから振り返ると……


笑顔で小さく手をひらひらと振る彼の姿。



……追わないんだ?いや、追われても困るけど。


バタバタとお店に似合わない音を立ててエレベータースペースに行く。


チン、と控え目な音がして開いたドアにすぐに飛び込む。


1人で狭い個室の中でふーーーーっとため息をつく。


気が付くと、手首と腕が痛い……。


ふざけて引き寄せられた時の。


『好きな子』に、こんな強く力をかけるものなんだろうか。


て言うか、キスとか……


エレベーターの高度が下がるのに合わせて、あたしの気持ちも落ちていった。
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