私の師匠は沖田総司です【上】
「蒼蝶ちゃん……蒼蝶ちゃん……」

私を呼ぶ声と、肩を揺する感覚で目を覚ました。

最初は視界がぼやけていて、はっきり見えなかったけど、瞬きすると視界が鮮明なものへと変わった。

鮮明になった視界の先に映ったのは山崎さん。心配そうに眉を垂れさせていました。

「蒼蝶ちゃん、大丈夫か?ずいぶん魘(ウナ)されとったで」

「山……崎さん?あの、私、どうして……?」

ゆっくりと視界を動かす。ここは、私の部屋のようです。

いつの間に部屋に戻ったんだろう……。

私は記憶の糸を手繰り寄せ、眠る前の記憶を探った。

月の光が明るい道。私は不審な行動をしていた隊士の後を追ったんだ。

そして、私は……。

「っ……!?」

突然、赤い血に濡れた自分の手が、映像の一コマのように映し出された。

そうだ……そこで、私は人を……殺した。

肉を斬る感触……血管が脈打つ感触……あの時感じた感触が次々と蘇ってくる。

「私は、人を殺し……た。人を、殺した!!あぁ、いっ……いや、いやぁぁぁぁ!!」

「蒼蝶ちゃん!」

耐えがたい恐怖から逃れようと、暴れ出す私を山崎さんが抱きしめた。

私が激しく暴れても山崎さんは絶対に離さなかった。

しだいに落ち着いてくると、山崎さんは泣きじゃくる子供を落ち着かせるように、私の背中を軽く叩いた。

「蒼蝶ちゃん、落ち着いてな」

「ひっく……ごめんなさ、……ごめ、なさい……」

「ゆっくり息を吸うんや。……そう。そして吐いて」

山崎さんに合わせて深呼吸をする。何回か深呼吸をする内に、心が落ち着いてくる。
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