私の師匠は沖田総司です【上】
鈴虫の声が静かに聞こえる夜。

私は行灯の明かりを頼りに、竹取物語の文字を白い紙に書き写していました。

ミミズ文字を読めるようになった今、ミミズ文字を書く練習をしています。

筆に黒い墨をつけ、指に程よい力を込めながら文字を書いていく。

「天宮、まだ起きてたのか」

突然の訪問者に身体がビクゥ!となりました。

恐る恐る目を向けると、そこには土方さんがいました。文字を書くのに集中して足音が聞こえなかった。

「驚かさないでください」

「すまんすまん」

絶対すまないと思ってないですね。

プクッと頬を膨らませたら土方さんが苦笑して「何だよその顔」と言い、私の両頬を手で挟みました。

口からプシュ~と空気が抜けます。

……土方さんが顔から手を離してくれません。私の顔を挟んだままじっと見つめてきます。

そしてポツリと呟きました。

「酷いクマだな」

「土方さんといい勝負です」

「アホか。おまえ程酷くねえよ」

そうでしょうか?

眼鏡の下から見えるクマもクッキリ浮き出ています。土方さんもパンダです。

「もう寝ろ」

「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」

「俺は良いんだよ」

「私だって良いんですよ」

「一人じゃ寝れないのか?」

「お生憎様、私は添い寝してもらわないと寝れない程、子供ではございません」

「だったら寝ろ」

「イヤです」

いつまでこのやり取りを繰り返すのでしょうか?
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