私の師匠は沖田総司です【上】
「ああ、うん……。子猫か……」

土方さんも反応に困っています。さっきから苦笑いのまま表情が固まっていて、手に持っていた煙管をクルクルと回している。

「一応聞いとくが、理由はそれだけじゃないよな」

「もちろんです。さっきの理由は次点ぐらいです」

トップ3にはランクインしてるんですね。

「一番の理由は副長が昨夜おしゃった言葉です」

「俺か?」

「ええ。副長は昨夜、部屋で酒を飲みながら俺に言ったじゃないですか。

『ああ、隊士が少なきゃ巡察もろくに出来ねえ。早く新選組の名をあげなきゃならねえのに、こんな所で足踏みしてる時間はねえんだ。もうこの際、女でもいいから隊士になってくんねえかな~』、と」

だから俺は女でも連れてきましたとドヤ顔で言う斎藤さん。

斎藤さん、たぶんその土方さんは酔った勢いで言っちゃったみたいな感じですよ。

ほら、見てください。土方さん、額に手を置いて思いっきり悩んでます。

「あれ、俺昨日そんなこと言ったっけ?やべえよ、全く覚えてねえ」みたいなナレーションが聞こえてきますよ。

「……そうだったな。確かに昨夜そう言った。さすがは斎藤、仕事が早いな」

副長のプライドが傷つくのを恐れて、覚えてもないことを覚えてるように振る舞ってるよ。

明らかに目が泳いでる。見てて痛い、痛すぎる。

「さすがは副長!昨夜は結構酔っていらっしゃったのに、覚えていたとは!お役にたてて俺は嬉しいです!」

斎藤さん、酔っていたのを知っているなら、覚えてないという可能性には気付けないのですか?
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