私の師匠は沖田総司です【上】
すると土方さんは私の行動を読んでいたのか、すぐに距離を詰め、第二、第三と次々と攻撃してくる。

土方さんの攻撃は一撃一撃がとても重い。

避けきれず木刀で受け止める度に、ビリビリとした振動が腕から全身へと広がる。

「女にしてはなかなかやるじゃねえか」

小競り合いになっていると、土方さんが謎の微笑みを唇に漂わせた。何がそんなに可笑しいのだろうか。防戦を強いられている私がそんなに可笑しいのか?

「っ……!」

力任せに押し出され、土方さんとの距離がひらく。

息を少し乱す私とは対照的に、土方さんの顔にはまだ余裕の笑みが浮かんでいた。

私は思わず笑みがこぼれ構えを解いた。

土方さんの目が細められる。私の行動が理解できない、そんな感じだ。

「さすがは土方さん、だてに新選組の副長の名は背負っていませんね。私の想像以上の強さです」

「褒めたって手加減なんかしねえぞ」

「そんなつもりはありませんよ。だた思ったことを口にしたまでです」

昔、師匠から、土方さんの戦い方は剣道と言うより、喧嘩に近い戦い方で、攻撃を先読みしにくいと聞いていた。

確かに思いがけない所から木刀が現れ、何度も肝が冷えた。

師匠の戦闘センスにはいつも驚かされていたが、土方さんも師匠に並ぶ程の戦闘センスがある。

このまま長引けば確実に負けてしまう。

そしておそらく無暗に攻撃をしても私の攻撃は土方さんには届かない。

そこで私は大きな賭けに出ることにした。

一つ息を吐き、精神を集中させる。そしてゆっくりと木刀を構えた。
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