私の師匠は沖田総司です【上】
しばらく師匠と稽古をしていると、家から私を呼ぶ声がしました。

『朝の稽古は終わり。次は学校から帰ってきてからね』

「はい、ありがとうございました」

師匠はご苦労様と言って、桜の木に姿を消した。

家に戻るとシャワーを浴びて、2階の自分の部屋に入る。

そしてハンガーに掛けられた、私が通う高校の制服に着替えると、胸の辺りに付けられた2学年を表す青色のバッチが、朝日に照らされキラリと輝いた。

姿見を見ながら、胸下まである髪をゴムで一つに括ると、黒鞄を持って階段を下りる。

居間に行くと朝食が用意されていて、お父さんが新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。

「お父さん、おはよう」

「おはよう。今日も朝から剣道の稽古をしていたのか?」

「うん」

手を合わせて「いただきます」と言ってから朝食を食べ始める。味噌汁を飲んだら優しい味がして、幸せな気分になりました。

お母さんが作ってくれる味噌汁はいつも美味しい。

「本当に毎日続けるな。もう何年ぐらい続いているんだ?」

「う~ん、10年ぐらいかな」

「そうか、もうそんなになるのか。蒼蝶は偉いな、熱中できることがあって」

「そうかな?」

でも、私がここまで剣道の稽古に熱中できるのは師匠のおかげだ。

師匠がいたから私は今まで続けられた。

もし、師匠がいなければ絶対に無理だった。

「でも、あまり無理しちゃダメよ」

お母さんが居間にやってきて、朝食を食べ始める。

「無理なんてしてない。だって私、剣道が大好きだから」

「そう?だったらお母さんは何も言わない。でも、たまにアナタ独り言、言ってるわよね」

「そうだな。まるで誰かと話してるみたいだ」
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