私の師匠は沖田総司です【上】
「ええ、武市先生はウチがもっとも尊敬してる人なんよ」
以蔵の言葉に蒼蝶は少し眉を寄せた。
「でも、武市さんは八月十八の政変後に捕まった岡田さんに毒入りのお饅頭を与えたんですよね」
「へ~、未来にはそないなことまで伝わってるんやな。確かに蒼蝶ちゃんの言う通り、先生から毒入りの饅頭を貰った。
ウチに饅頭を渡した奴がわざわざ毒が入ってるって言ったからな。そしてそれが先生からやとも言ったわ」
「だったら……」
「……どうやら未来には真実は伝わってないんやな」
以蔵は口元を隠して綺麗に笑った。
蒼蝶は目をキョトンとさせている。
「毒入りの饅頭を受け取った時、先生はウチに見切りをつけたんやと思った。そのときは悲しかったな。
でも、先生がウチの死を望んでいるならその願いを叶えたかった。それだけウチにとって先生は大切やったんや。
饅頭を一口食べて飲み込んだ。しばらく毒が回るのを待っていたんやけど、何も起きない。
毒が弱いのかと思って食べ続けても結果は同じ。不思議に思いながら食べ続けていると、中から折り畳まれた紙が出てきたんよ」
「紙ですか?」
「そうや。その小豆にまみれた紙を広げてみると、先生の字でこう書いてあった。
牢獄を出て親友である坂本龍馬を守ってくれってな」