私の師匠は沖田総司です【上】
***

「……」

目を覚ますと体に羽織が掛けてありました。

誰のでしょうか。

……そうですね、とりあえず。


くんくん。


羽織の匂いを嗅いでみました。羽織からは男の人と煙草の臭いがします。

「これは……土方さんの羽織ですね」

覚えのある煙草の臭いが決め手でしたね。すぐにピンときました。

すぐに羽織を持って土方さんの部屋に行きます。

私が持っていてもしょうがないですし、何より土方さんが風邪を引いたら大変です。

この新選組は土方さんがいるからこそ回っているようなもの。

土方さんがダウンしたら新選組が機能しなくなります。

「土方さん」

「天宮!?」

部屋の中から土方さんの驚いた声がしました。どうして驚くんでしょうか。

「入ってもよろしいでしょうか」

「ああ、入れ」

「失礼します」

私は部屋に入りました。するとやはり、部屋の中から微かですけど、羽織と同じ煙草の臭いがします。

「羽織、私に掛けてくれたんですよね。お返しに来ました」

「俺のだって分かったのか?」

「はい。羽織から土方臭がしたので」

土方さんが顔を少し引きつらせました。

私、何かマズイことでも言いましたかね。

「土方臭って……まるで俺が臭いみたいじゃねえか」

「申し上げにくいのですが、お世辞にも良い匂いとは言えませんね。土方さん自体は良い匂いなんですけど、9割方が煙草の臭いなんです。

私、煙草の臭いが苦手なので、良い匂いとは認識できません。だからごめんなさい。気に障ったなら謝ります」
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