私の師匠は沖田総司です【上】
そう言って、土方さんは私に優しく微笑む。

そして私の眉間を軽く押しました。

土方さんは私に眉間に皺を寄せず笑っていろ、と言いました。

でも、それなら

「それなら土方さんも一緒ですよ。土方さんも、眉間がギュ~っとなってることがありますから」

すると土方さんは悲しそうな表情をしました。

その表情を見た瞬間、胸がドキッとした。

「俺か……俺はいいよ。俺は鬼の副長として組の為に、恐れられる存在じゃねえとならねえ。

そうしねえと、あの生まれも身分もバラバラの奴らをまとめられねえからな」

言葉を聞きながら、私は思ってしまう。

土方さん。貴方は本当の表情を隠す為に、鬼のお面を着けていたんですね。

今の土方さんの表情は普段隠れているもの。

私は鬼の副長と呼ばれた方の本当の表情を見た気がします。

でも、本当の表情を見るなら笑顔の方がいい。

「でも、やっぱり土方さんは笑って欲しいです。私の前だけでも笑ってください。こうやってニィっと口角を上げて」

指で自分の口角を上げると、土方さんの表情が柔らかくなった気がします。

「気が向いたらな」

「笑う門には福来たるです。でも、無理に笑わなくてもいいですよ。土方さんが言った通り、気が向くまで待ちますから」

「ああ」

土方さんが返事をすると襖が開きました。
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