私の師匠は沖田総司です【上】
「上手く説明できなくて、ごめんなさい」

「いや。まぁ、とりあえず一番仲良くしたい奴に嫌われてることは分かった。

……そうか。とりあえずそいつと仲良くなりたいなら、そいつが喜ぶことをしてみたらどうだ?」

「喜ぶことですか?」

「ああ。相手が嫌ってるならこっちから行動しないと、関係はいつまでも平行線だ。

ダメで元々だ。やってみる価値はあると思うよ」

確かに男性の言葉は的を得ている。組長に残された時間は少ないんだ。早くしないと労咳に侵されてしまう。

こんな所でいつまでも足踏みしてる場合じゃない。

でも、組長が喜ぶことですか。

……何も浮かびませんね。

「ちなみに貴方は何が喜びですか?」

「俺か?俺は……酒を飲んでる時とか、美味い物を食う時とかだな」

「なるほど。参考になります」

「それはよかった」

この時、男性が初めて笑いました。

その笑顔は陽だまりの様な温かさがあって、見てる人まで幸せにするような笑顔。

私も思わずつられて笑顔になってしまいました。

「さっそく明日から行動に移してみます!」

「頑張れよ」

「はい!ありがとうございました。では、私、そろそろ部屋に戻りますね」

そう言って背を向けると、男性に呼び止められました。

「おまえ、名前は?」

「天宮蒼蝶です」

「蒼蝶か。俺は坂本龍馬だ」
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