【短編】ドーナツ

「おう」


いつもと同じ、無表情の気の抜けた挨拶。


きっとあたしがここまで走ってきたことも、背後に近づいていたことも、彼は全部お見通しだったんだ。


「…おはよう」


あたしは急に恥ずかしくなって、フェンスにかけた足を下げながら俯いた。


赤茶色の糸で校章のワンポイントが刺繍された紺色のハイソックスは、飛び散った泥水と粒子の荒い校庭の砂で白く汚れていた。


二つの内、まだマシな方の足をもう片方の上に重ねて汚れを隠しながら顔をあげると、彼は軽々とフェンスを上りきった所だった。


無気力なくせに、身軽。


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