コーヒーを一杯


「いらっしゃい」

カウンターからかかる声に目をやると、白いシャツをパリッと綺麗に着こなしカフェエプロンを素敵に締めた女性が迎えてくれた。
長い髪の毛をクルリと器用に一つに纏めているせいか、その整った鼻筋やきりりとした目元のせいか女性なのに男性のような精悍な印象を受ける。

「おや。珍しいお客だね」

女性はそういうとカウンター席を勧め、自分はカウンター内へと入っていった。

促されるままに彼女の目の前にある椅子に腰掛け、持っていた紺色の学生鞄を隣の椅子に置く。
そうしてまたカウンターの彼女へ視線をやると、なんとも表現できない穏やかな表情で自分のことを見守るように見つめていることに気がついた。

それだけで、つい今しがたまで抱えていた自分の中にあるどうしようもない感情を、全て受け止めてもらえるような安心感を彼女は覚えた。


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