僕の幸せは、星をめぐるように。


しかし、急に目の前の扉がガラリと開き、


「ちょ、阿部ちゃん~! まだ戻ってこねーの? ……あ、サーセンしたぁ!」


とさっきのイケメンさんが顔を出したかと思えば、再びガラッバタン! と扉が勢いよく閉められた。

その反動か、扉は1cmほど開いてしまっている。


よく見ると、そこからいくつかの目がわたしたちを覗いていた。


「……ぷっ」


今度はわたしと阿部くん、同時に吹き出した。

阿部くんの頬が少しだけ赤く染まっているような気がした。


「じゃ、わたしそろそろ帰るね!」

「うん。またね」


心臓をばくばくさせ、しゃりしゃりとすのこを砂利に打ちつけながら、わたしは帰路についた。


しゃり、しゃり、たん、たん、たっ……。


無意識のうちにわたしの足はどんどん早くなっていく。

次第にズックがすのこに打ち付けられる音の方が大きくなっていった。


『かわいいなって思った』


頭の中ではさっきの阿部くんボイスがオートリピートされていた。


男の子にそんなこと言われたのは初めてかもしれない。


小学校の頃は男子にまざって野山を走り回っていたし、

中学校の頃は、陸上部で真っ黒に日焼けをしながら、

恋なんてするヒマないほどにガンガン部活に励んでいたし。


同時にさっきの阿部くんの手の感触を思い出す。


触れられた瞬間、阿部くんの体温がわたしに溶け込んでいくようだった。

おかげで顔は熱いし、胸は苦しい。


もうわたしがでろでろに溶けちゃいそう!


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