僕の幸せは、星をめぐるように。


「でも図書室って勉強するとこって感じじゃん。何か落ち着かなくない?」


頭が良い人たちが書いた文字たちで構成された空間。


読めよ勉強しろよと責め立てられているように思えて、わたしは苦手だった。


「……結構落ち着くよ。誰もいない時限定だけど」


そう言って、阿部くんは表情を変えないまま、視線だけを左上へ動かした。


彼の心が今どこにあるかが分からない。


胸がずきずきと痛む。

近いのにやっぱり遠い。


「わたしもあったよ。消えたくなる時。でも……」


そう。最近は思わなくなった。


むしろここに存在していたいと思っている。



もともと、わたしはクラスでも目立たない方だったし、

勉強もさっぱりだったけど、

まわりの子よりも足が速かった。


それは本当にたまたまなことだったんだけど、それが自分の長所だと思っていた。


同学年の中には、わたしよりも速く走る子は何人かいた。

だから、短距離の選手にはなれなかった。悔しかった。頑張ってリレーの第二走者だった。


でも、走り幅跳びではわたしが一番だった。

それが嬉しかった。

遠くまで風をきって飛べる感覚にもわくわくした。


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