僕の幸せは、星をめぐるように。

「えーと、えーと……」


やばい、たぶん視線がうようよと泳いでしまっているはず。

でも、彼はわたしをじっと見つめたまま。


どっくんばっくんとわたしの心臓の音がおかしくなっていく。


部屋の隅にある目覚まし時計の針が、チクタクと一定のリズムで鳴っているのが不自然に思えるほど。


うあああ! もうどうにでもなーれ!


わたしは目をつぶりながら、彼の唇に自分のを押しあてた。

軽くちゅってするつもりが、結構な密着度合いになってしまう。


きあああああ!

ドキドキしすぎて口から心臓が出てきそうだ。


「わがまま言ってごめんね。ありがと」


離れた瞬間、彼はわたしに向かってそう言った。


なぜか、ごめんね、という言葉がわたしの心にちくっと刺さる。


「謝らないでよ……。別にいいし」


って、これなんか余裕ぶった発言じゃない!?


急いで「えーと、阿部くんはいちいちごめんねって言いすぎだから!」と言いなおすと、

「そう? くせなのかなー」と左側に視線を移しながら、彼は首をかしげた。


――くせ、とはちょっと違う。


阿部くんの『ごめんね』は、

自分の思いを出すとき、自分自身を伝えようとするときに、よく出るのだと思う。


「わたしの前ではごめんね禁止! なんか違う言葉に言い換えてくださーい」


「え? 何だろう。難しいなー」


「じゃ、阿部く……せーちゃんがそう言ったら、わたしが勝手に自分の頭の中で変換する! 

『ごめんね』は……えーと、何にしよう」


「好きだよ」


「え?」


「これからはそう変換しておいて。たぶん間違ってないと思うから」


あ……それなら嬉しいかも。


「うん。分かった」


わたしは再び頬を熱くさせながら、同意しておいた。


すると、

「ごめんね。今、すごくトシミのことギュッとしたい」

と、彼は微笑みながらもわたしの目をじっと見て言った。


「ええええええ!?」


ピピー! それ反則! ファール!


あーもーだめだめだめ。

これ以上ドキドキしたらわたし爆発しちゃう!

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