僕の幸せは、星をめぐるように。


「だから、トシミもがんばれ」


「……うん」


「彼女作る気ないっていうの。あくまでも『今は』ってことだべ? 阿部くん、夏休み前に誰かから告られてフったって噂だし」


「ん……ありがと」


楽しみにしていた夏の一大イベントが終わってしまい、少し寂しい気分になっていたけど、

わたしの中で次第に大きくなっていく感情と、もっと向き合っていきたいと思った。


べ、べつに失恋したわけじゃないし。


でも、花火の時の阿部くんの手。

保健室で繋がれたものとは、違うもののように感じた。


わたしの感覚が、あの時とは別物だっただけかもしれないけど。


ってかあれは反則でしょ!

ドキドキ、いや、何かすごく安心して泣きそうになっちゃったし。


わかんないわかんないわかんないってー!


いろいろ頭の中を整理させたかったけど、

今日は朝が早かったこともあって、すぐにうとうとと眠りについてしまった。


夢は見なかった。


たぶん見たのかもしれなかったけど、

心地よいバスの揺れによる、深すぎる眠りによって全て忘れてしまったのかもしれない。




「うおー! マジ寝た! ちょ待って。寝起きすぎてやばい~」


刺すような朝の光の中。

バスを出ると、よろよろと前かがみで逃げるように歩くクニオの姿があった。


「うわ、まじありえなーい!」

そう言って、ユカチンはそれを避けるように逃げ回る。


「うう。しゃーねーべ? 男の生理現象だぁ」


わたしは阿部くんと一緒に苦笑しながら、クニオとユカチンのやり取りを見ていた。

男の子も大変なんですね……。


すると、ユカチンがわたしの背後にまわり、「おめぇ今阿部くんの股間チラ見したべ?」とぼそりとささやいた。


「はぁあ!? してねって!」


阿部くんはちょっと前から起きてたし、大丈夫でしたからー!









< 98 / 317 >

この作品をシェア

pagetop