君と願ったたった一つのもの
ある休みの日。

「お母さーん」

今は家の掃除中。

「あっ、美来、洗濯終わった⁇」
「うん、今から畳むよ」
「お母さんも手伝う」

お母さんは洗濯物を挟んだ私の前を正座して座る。

「美来、そう言えばあの、瞬君だっけ⁇最近も仲良いの⁇」

お母さんはいきなりそんなことを聞いてきた。

「へ⁇なんで⁇」
「うんうん、なんとなく」
「そっか。最近は…もう一緒にいない」
「そうなの⁇」
「うん…多分私、避けられてるんだ」
「え⁇どうして⁇」
「それが…気持ちを伝えて…」
「え⁇」

お母さんの口が開く。

手も止まってしまった。

「好きに…なっちゃって…可笑しいよね先輩に恋とか」

って、照れくさく言ったら

「美来…あの人は…」
「え⁇」
「…やっぱお母さん、知ってる人だったから…」
「そうなの⁇」
「とにかくあの子は絶対だめ」
「なんで⁇」

なんで、佐野先輩はだめなの⁇

「とにかくだめなの。好きになったなら諦めなさい」
「なんでそんなこと、お母さんに…大体
私の気持ちなにも知らないくせになんでそんな事が平気で言えるわけ⁇私、初めて人を好きになったんだよ⁇なんでお母さんに決められなきゃならないの。お母さんになんか、言われたくない。言わなきゃ良かった」

私は部屋へ駆け込む。

本当、言わなきゃ良かったよ。

後ろからはお母さんの声が聞こえる。

「美来‼︎待って‼︎」
「もうなに‼︎」

部屋まではいってくるお母さん。

「美来の気持ち、本当分かる。けどね、世の中好きになっちゃいけない人もいるの」
「お母さんは先輩のなにを知ってるわけ‼︎」

わけわかんない。

「…知ってるよ」
「え⁇」

声が小さくてよく聞こえなかった。

「知ってるから言ってるの」
「なにそれ」
「今更言っても…信じられないかもしれないけど…」
「なに」
「美来のその机の上にずっとある写真」
「…」

私はそっとその写真に目をやる。

それは私と、男の子が載った写真だった

これ…幼稚園の時だよね。

その男の子がどこの誰だか分からない。

けど、お母さんが

昔よく遊んでた子。

と、言っていた。

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