たかしと父さん
卒業が近づく
あの夜、我が新田家は大変な騒ぎだった。いや、むしろ大変な静けさに包まれていた。篠宮父はそれからしばらくは何を言ってもひたすら謝るだけだし、僕とさらはそんな大それたことを(本気では一度も!)考えたこともなかったし、なぜか姉が「大学はどうすんだよ!?」といって隣の部屋から乱入してくるし、その姉にすら篠宮父は平謝りだし・・・結局、僕の両親と篠宮父だけで話すことになった。僕とさらは姉と一緒に近所でラーメンを食べることになった。

「今日、ラーメンじゃなくてもよくない?1万円貰ったし。」

姉は上機嫌だった。

「エビチリたのんじゃおー!」

父の車を姉が運転して近所の中華料理屋に到着する。店に入って時計を見ると9時過ぎている。

「こんな時間まで二人でいたことないね。」

さらはなんだか優しい表情に戻っていた。

「お邪魔してすいませんでした。」
「あ・・・そういう意味じゃなくて!」

姉の言葉にさらがハっとする。姉はいたずらっ子の顔をしている。

「ねーちゃん早く頼もう。」

思えば2年も付き合ってるのにバイトもしてない高校生二人だったので、ろくにご飯を食べに来たこともなかった。こんな時間にこんな場所で見るさら(私服)は新鮮だ。初めて会った時から24時間365日休まずずっと可愛い。

「さっきの話、あんたたちはその気はあるの?」

水噴いた。お前、そのお金おいて居なくなれよ。

「お父さんが何考えてるか分かんないけど、私は嬉しいです。」

また水噴いた。

「我が弟ながら汚い。」
「・・・ごめん」
「どうすんの、彼女さんはそれでもいいって。」

僕はテーブルを拭いながら、さらの顔を見た。さらの何かを期待している時の顔だ。

「せ・・・生活とか・・・しゅ・・・就職とか、そういうのいろいろ・・・」

姉が切れた。

「そういうことを聞いてんじゃないの!その『気』があるかってそういうことでしょ!!」

中華料理屋が一瞬静まった。絶対、姉は酔っぱらいだと思われている。

「『気』はあるよ!考えたことなかったけど!・・・確かに二人で『そんなことになったらすごいよね』って話したことはあるけど、本気で考えたことなんて一回もないけど・・・でも、一生のこと考えると、大学行かないとなって。」
「エビチリおまたせしましたー」

今か。
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