君の名を呼んで
「雪姫」
彼女はまたビクリと身を震わせた。
「……送る。帰るぞ」
俺の言葉に、ためらうように口を開きかけた雪姫だったが、それを遮るように白鳥が言う。
「今日は僕が送ります。今の君では逆効果のようですから」
「なっ……」
「行きましょう、雪姫」
抗議する間もなく、ただ彼の言うことに従う雪姫。
確かに、今の俺じゃ腹立ちまぎれに、滅茶苦茶に雪姫を抱くかもしれない。
雪姫の傷なんて考えもせずに。
それを他人に指摘されたのにもムカつくし、雪姫自身が予想しているだろうことに更に苛々する。
何よりも白鳥に黙って従う雪姫に違和感を覚える。
「おい、雪姫……」
引き止めた俺の手が掴んだその細い手首には、真っ赤な痣が残されていて。
それに目を奪われた俺は、咄嗟に手を放してしまった。
その俺の顔を見た雪姫の瞳から、涙が一筋、零れて落ちる。
「すみません、副社長……」
拒絶じゃない。
拒否でもない。
なのにそう誤解させた、と気付いたけれど。
俯いた雪姫と、もう目を合わせることはできず。
その涙を拭ったのは俺ではなく、白鳥だった。
なじられたほうが、責められたほうがマシだった。
諦めた目をされるくらいなら。
あんなに呼ばれるのを嫌っていたはずの名前を、雪姫が呼ばなかったことに不安を感じた。
「雪姫、おいで」
そう言って白鳥は、雪姫の背を押して出て行く。
彼女をみすみす他の男に渡してしまった、と気づいて、俺はただその背中を苦々しい思いで見つめていた。
彼女はまたビクリと身を震わせた。
「……送る。帰るぞ」
俺の言葉に、ためらうように口を開きかけた雪姫だったが、それを遮るように白鳥が言う。
「今日は僕が送ります。今の君では逆効果のようですから」
「なっ……」
「行きましょう、雪姫」
抗議する間もなく、ただ彼の言うことに従う雪姫。
確かに、今の俺じゃ腹立ちまぎれに、滅茶苦茶に雪姫を抱くかもしれない。
雪姫の傷なんて考えもせずに。
それを他人に指摘されたのにもムカつくし、雪姫自身が予想しているだろうことに更に苛々する。
何よりも白鳥に黙って従う雪姫に違和感を覚える。
「おい、雪姫……」
引き止めた俺の手が掴んだその細い手首には、真っ赤な痣が残されていて。
それに目を奪われた俺は、咄嗟に手を放してしまった。
その俺の顔を見た雪姫の瞳から、涙が一筋、零れて落ちる。
「すみません、副社長……」
拒絶じゃない。
拒否でもない。
なのにそう誤解させた、と気付いたけれど。
俯いた雪姫と、もう目を合わせることはできず。
その涙を拭ったのは俺ではなく、白鳥だった。
なじられたほうが、責められたほうがマシだった。
諦めた目をされるくらいなら。
あんなに呼ばれるのを嫌っていたはずの名前を、雪姫が呼ばなかったことに不安を感じた。
「雪姫、おいで」
そう言って白鳥は、雪姫の背を押して出て行く。
彼女をみすみす他の男に渡してしまった、と気づいて、俺はただその背中を苦々しい思いで見つめていた。