君の名を呼んで
やだよ、皇。
嫌です、城ノ内副社長。

BNPの為に一生懸命で。
誰よりも真剣に仕事に取り組んでて。
そのために悪役になることも厭わなくて。
そんな人が、BNPから引き抜かれてしまうなんて。

私のせいなのに。
私のせいでこんなことになったのに。
私には責任をとる力さえなくて。

頬を伝って、涙が零れた。
けれど、それをすぐに拭う。

私には、泣く権利だって無い。


ーーヴヴヴ


手の中で、携帯が震えた。
反射的に通話ボタンを押して、耳に押し当てる。


『雪姫!?無事なのか?「桜里」』

桜里の声を遮って、私は呼びかけた。


守りたい。


「お願いがあるの」


大好きな、あなたを。
尊敬する、あなたを。


守らせて。
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