君の名を呼んで
そんなの、俺が聞きたい
真っ白なインテリアに、隙のない美女。

ーーSRIミュージック、社長室。
私の前には、芹沢社長。


次の日、私は会社に午前休みをもらって、ここに来ていた。
門前払いされるかと思ったけれど、彼女は私の名を聞いて社長室に通してくれた。

きっと、城ノ内副社長絡みだと分かっていたんだろう。


「何しに来たのかしら」

「賠償金を支払いに来ました」

私はまっすぐに彼女を見た。
芹沢社長は艶やかな声で笑い出す。

「あなたが?三千万円を?」

「ええ。ですが支払うのはBNPではなく、梶原雪姫個人です。今回のことは私の責任で、会社には関係ありません」

BNPにはエアリエルのイベントも、他の色々な仕事もある。
このことが会社のマイナスイメージになるのは困るんだ。

「そんな言い分が通用するとでも?」

芹沢社長の視線に負けまいと、必死でポーカーフェイスを装う。

「きちんと調査させたら、そちらだって色々と面倒なんじゃありませんか」


何故蓮見君と私が二人であそこに居たのか、事故が故意だったかもしれないこと、それを調べられたら困るんじゃないかと暗に匂わせて。

……きっと城ノ内副社長には、また『へたくそな演技しやがって』って言われるんだろうな。
< 154 / 282 >

この作品をシェア

pagetop