君の名を呼んで
***

ああ、やっちゃった。


我に返った私が思ったのは、そんな台詞。
嘘も間違ったことも言ったつもりは無いけれど、これから一生を共にしたいって挨拶に来た、恋人の両親に向かっての態度では無いよね。
でも、我慢できなかったんだもん……。

おそるおそる、皇を見れば、彼は私の方が面食らうくらい、優しい笑顔をしていた。


「お前、最高」


え……。

戸惑う私の前で、皇のお母様が口を開いた。


「あなた……白鷺雪姫さんでしょう」

え?

知られていたことにびっくりして、慌てて頷く。
皇のお父様が妻を見た。

「ん?知り合いか」

「違うわよ。ほら、皇が子供のときに熱心に観てたテレビの」

「ああ!あの女の子」


二人は顔を見合わせて記憶を擦り合わせたのか、うんうんと頷き合う。
な、なんだか自分の子供の頃を知られているって気恥ずかしい。
けれど実の息子はもっと恥ずかしかったらしく、きまり悪げに黙っていた。

「ってことは、皇ってば、初恋の女の子と結婚するの!?やだ我が息子ながらロマンチスト過ぎ!」

お母様は両手を頬に当てて、少女みたいに声を上げる。
お父様も目を丸くして、皇と私を交互に見た。

「うるせえよ。いいだろ別に」

皇が、かすかに赤くなった頬を押さえて、憎まれ口を叩くけど、次の瞬間、自分の母の顔を見て黙ってしまう。


彼女はうっすら涙を浮かべて、微笑んでいた。
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