君の名を呼んで
「すず、貰ってくれる?」

彼女に差し出したのは、私が持っていたウェディングブーケ。
すずが目を丸くした。

「いいの……?」

聞く彼女に頷いた。

「私、至らないマネージャーだけど、すずは本当に大事な妹みたいなものだから。すずに貰って欲しいの」


素直で努力家で、その明るさで、強さで、何度も私を助けてくれたすず。
感謝してもし足りない、私の妹で、友人で、同志。


「すずが信頼してくれたから、私マネージャーをやってこられたの」


ありがとう。
そう言ったら、すずは手を伸ばしてブーケを受け取ってくれて。


「雪姫ちゃあん、大好き~!ホントに、おめでとう」

と涙目で抱きついてくれた。


「私もあなたが大好きだよ、すず」


私も同じように泣いていたのに気付いたのは、笑顔のすずにハンカチを差し出されてからだった。


しばらくそのまま、すずと抱き合っていたなら。


「おいコラ、何ヒトのオンナ泣かせてんだ」

……何故そこでそのセリフ。


「今良いとこなのにぃ~」

そう顔を上げたすずに、皇はニヤリと背後を指し示す。

「どうせ泣くならあいつの前にしろ。三割り増しでな」

見れば朔が真野社長と談笑していた。


「二ノ宮先輩はダメですよぉ。涙なんかじゃ動じないし、演技だとバレるし」

すずが口を尖らせて、それでもニコリと微笑んで私の肩を叩いてから戻って行った。
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