君の名を呼んで
……あ。
舞華さんを見ていたら、突然引っかかっていた理由がわかる。

真っ黒の艶々なボブの髪。
白く透き通る肌に、赤い唇。
まるで“白雪姫”だ。
ディズニー映画の白雪姫を思い出す。


『ブランシュネージュ、白雪姫だよ』

『城ノ内の初恋の人』

『幼なじみ』


先程聞いたばかりの社長の言葉と、城ノ内副社長の言葉が私の中でパズルみたいにハマった。

きっとそうだ。
城ノ内副社長を唯一『皇』と呼べる女性。
彼が特別に優しい目を向ける女性。


舞華さんが、城ノ内副社長の初恋の人……。


目の前でひとしきり盛り上がっている二人を見ていられなくなり、私はだんだんといたたまれなくなって。
車に戻る頃にはずどんと落ち込んでいた。
シートベルトをする私の顔は、明らかに沈んでいたのか、

「なんだよ、雪姫。何か言いたいことがあんなら言え」

城ノ内副社長が車の窓を開けて煙草を取り出した。

「社用車は禁煙ですっ」

ふんっと鼻息荒く煙草を取り上げようとしたなら、その手を掴まれた。


「言えよ」


その長い指が、私の手を滑って、形の良い唇が開いて私の指先をかり、と噛む。

「――っ！！」

な、な、なにこの色気！
ぞくり、と鳥肌が立つ。
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