リミット
いつも
ー私たちには、タイムリミットがあるー

私たち、と言うよりは、私だけかもしれない。


肌寒い10月の朝、私 吉田 姫鳴 (よしだ ひめな) は始発の電車に乗った。

家から徒歩10分で着く駅から電車に乗って、三つ目の駅。

そこに私が通う 東野椿ひがしのつばき高校 はあった。

私は、ガラガラの車内のいつも決まった席に座る。

朝日が暖かくて、目を閉じる。

目を閉じて、考える。

来年の春が来れば、私は嫌でもこの高校を卒業する。

地元の大学へ進むか、専門にいくか、進路はまだ、決めてない。

したいことも、好きなことも何もない。

そんな私がこの先、何を目的に生きてゆくのだろうか。

「姫鳴」

誰かが私を呼ぶから、うっすらと目を開ける。

誰か、じゃない。

誠、だ。

平本 誠 (ひらもと まこと) は、隣のクラスで、

私の従兄弟。

性格は一言で言うと、真面目。

「お前、たった駅三つなんだから寝るなよ」

私の頭をポンと叩いて笑う。

誠は二つ目の駅で乗って来て、私の隣に座る。

「お前、進路決めた?」

誠の問いかけに、首を振る。

「だよなぁ、俺も」

「誠はっ、」

誠は、いいじゃん。

勉強もできるし部活でも成績を残してるんだから、

東京の大学だっていけるじゃん。

言おうとして、やめた。

私たちの住む町は、東北の...都会の人から見れば田舎。

「まぁ、まだ時間はあるしゆっくり考えようぜ」

そう言って誠は立ち上がった。
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