冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う




診察室の扉が閉められ、彩也子さんとその女の子の様子が見えなくなると、理美さんは急いでお父さんのもとへ行った。

『彩也子さんが、女の子と一緒にあの部屋に入っていった』

理美さんのその言葉に、侑平さんは何か察するものがあったのか、彩也子さんが入っていったという診察室の扉をゆっくりと開くと。

理美さんに「大丈夫だから、ここで待ってろ」そう言って中に入って行った。

普段は温厚で優しい父親の厳しい表情を見上げ、子供ながらもただ事ではない何かが起こったと理解することは簡単だった。

理美さんは、父親に言われた通り、廊下の椅子に座り、弟の診察が終わるのと、父親が別の診察室から出てくるのを待っていた。

すると、

『瑠依、瑠依っ』

焦る表情を隠そうともせず、その名前を何度も口にしながら走ってくる男性数人。

彼らが女の子と父親が入って行った診察室に駆け込むと、「瑠依っ」と悲しげな声が廊下にも響いた。

幼いながらも理美さんは不安を感じ緊張したという。

ただ事ではない何か。

それは、誘拐されそうになった私が彩也子さんに助けられ、病院に運ばれたということだった。




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