冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う



そして、茅人さんを支えているのは、奥様である日里さんだ。

茅人さんと同じ学部で勉強していた日里さんは、人当たりも良く、大らかな性格で友達も多かった。

学費を稼ぐためにバイトでモデルをしていたほどのを見た目の良さ故に男性からの人気も高く、茅人さん以外の男性からも想いを伝えられることもしばしば。

その中でも茅人さんが日里さんに向ける愛情の強さはかなりのもので、日里さんの中でも茅人さんの存在は大きくなっていった。

次第に、茅人さんに対して抱く恋心を自覚することとなる。

だからといってその気持ちを素直に進めることはできなかった。

繁華街で食堂を営む家庭に生まれた日里さんは、遠くない未来、大企業の社長となる茅人さんとの立場の違いに悩み、付き合いを始めるまでにもかなりの時間がかかったらしい。

けれど、茅人さんと日里さんが惹かれあい、愛し合う気持ちを止めることはできなかった。

そして茅人さんの実家からの反対に心を痛める日々を送ることとなる。

茅人さんのお父さんは、精密電子部品を扱う企業の社長。

世界シェアトップを誇る部品を幾つか製造する、国内有数の大企業。

その大企業の後継者として育てられた茅人さんにとって、結婚相手を自由に選ぶことは難しい。

会社にとってのメリットを重視した結婚が望まれているわけではなく、大企業の社長としての責任を第一に考えなければいけない日常に馴染める妻という役割が重視されていた。

グループ企業を含めると何万人もいる社員とその家族の生活を最優先に、自分の幸せは二の次に考えなければならないことも多い。

自分の家族と過ごす時間を削ってでも、仕事に身を捧げなければならない。





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