冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
「『本当のこと告白します大会』は終了。これからは、『本当に愛していますと何度でも言っちゃうぞ大会』の始まりだ」
私の首筋に顔を埋め、くぐもった声で、けれど嬉しそうだとすぐにわかる声で囁いた。
一旦愛していると口にしたせいか、照れることなく何度もそう言ってくれる紬さんに、どんな心境の変化があったのかわからない。
今までどうして言ってくれなかったのかもわからないままだけれど。
「瑠依、コーヒーは後にして、ベッドに戻ろう」
甘い声でお願いされれば、私だってそれを願っていない訳じゃないし。
それに、徐々に明るくなったキッチンを見回すと、今からベッドに戻るなんて恥ずかしいけれど、拒むなんてできない。
「うん……」
消え入るような小さな声で、そう答えると。
「よしっ」
紬さんは明るい声でそう言って、私を素早く抱き上げた。
「つ、紬さんっ」
「あ、暴れるなよ。俺のお姫様をお姫様だっこだ。
……結婚式の夜に、お姫様だっこしながら寝室に入って、そこで初めて『愛してる』って言うぞって決めていたけど……気持ちが盛り上がりすぎたから、もう、我慢できねー」
「え? 結婚式の夜?」
「あ? ああ。え? やっぱり、結婚式の夜に言って欲しかったか? おばあが女の子の夢だって言ってたけど……焦りすぎか、俺」
寝室へと急ぐ紬さんの言葉に、聞き間違いかと驚いた。
「焦りすぎだとしても、どうしても言いたくて仕方がなかったんだ。
こんなに惚れた女と結婚できて、愛しているって言わずにいられるかよ」
軽く舌打ちする紬さんの表情は悔しげで、更に信じられなくなる。
「……愛しているって……言いたかったの?」
紬さんの首にしがみつき、問いかける私の声は震えている。
もちろん、紬さんから返して欲しい言葉はただ一つ。