冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う



やっぱり、そうだったんだ。

国見さんの一連の動きや、今回の事故の理由については、父さんを守るためのものだと予想していたけれど、紬さんからそれが事実だと聞かされると、予想以上に切なくなる。

父さんを、というよりも葉月グループの将来を考えて、国見さんは全てを背負ってくれたようなものだ。

国見さんは今頃、警察で……。

「瑠依……。国見さんには、葉月の顧問弁護士がついたらしいから安心しろ。
敏腕だって有名だろ?」

「うん……」

「俺だっている。瑠依が国見さんを守りたいって思うなら、俺が全力で国見さんをフォローする。
大切な嫁さんの一大事だ、旦那の俺を信じてどんと構えていろ」

私を気遣うように頷いた紬さんは、ふと何かを思いついたように口を開いた。

「というわけで、この先瑠依が浮気をしたって、隠すことはできないからな。
俺がその気になれば、どんな情報だって入ってくるんだ。
……江坂の力をなめるなよ?」

「え? 浮気?」

「ああ、忙しい俺の目を盗んで浮気なんてしてみろ、家に閉じ込めて二度と出さねー」

「出さねーって言われても、私、浮気なんてしないし」

「当然だろ? 俺がこの一年どんな思いで瑠依を手に入れようかと……。
ちっ、もしも瑠依が他の男にかっさらわれたら、俺はそいつを追い詰めて絶対に奪い返す」

「あ、あの、紬さん?」

紬さんは、話しているうちに、どんどん不機嫌になっていく。


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