冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う
具体的に出た日程に、私は驚いて何も言えなくなった。
おじい様たちが結婚式の準備を進めているらしいことは聞いていたけれど、まさかそんなすぐに結婚式の予定をたてているなんて、思ってもみなかった。
結婚式の準備って、一年は必要だと思っていたのに、どうしてそんなに早く挙げることができるのだろうか。
おまけに、私たちが結婚するとなれば家同士だけではなく大企業同士のつながりだって関係してくる。
それぞれのしがらみを考えれば招待客の選定だとか簡単じゃないはずだ。
すんなりと結婚式を挙げられると思っているらしい紬さん、どこかおかしい。
それに、何が一番おかしいかと考えれば、それは紬さんとのお見合い自体もおかしいようにも思える。
おじい様たちの忘れられない恋愛を理由に、ここまで躍起になって孫たちを結婚させようとするなんて。
よくよく考えれば不自然だ。
それに、おじい様にしても紬さんのおばあ様にしても、それぞれに幸せな結婚をし、今でも穏やかに過ごしていると聞いた。
そんな二人が、家族、というよりも企業を巻き込んでまで、叶わなかった初恋の成就を願うだろうか。
「わかんないことばかり……」
ぽつりと呟き戸惑う私の肩を、紬さんは気遣うように抱き寄せた。