キスはワインセラーに隠れて


この状況、私だって結構かわいそうなはずなのに、同情の言葉すらなく、須賀さんが食いついたのは若葉さんの方。

この間、キスマークに嫉妬していたのが嘘のようだけど、たぶんこっちが須賀さんの本当の姿だよね……


「……藤原はどこだ?」

「ワインセラーです」


私がそう答えるなり、つかつかと歩いて厨房を出て行こうとする須賀さん。

見届け人として、私も慌てて彼のあとをついていき、地下のワインセラーへと向かう。

あんな小芝居で騙したのは悪いと思うけど、須賀さんにも、ちゃんと自分が“本当に”好きな人と結ばれて欲しいから……


地下室の前まで来ると、迷うことなく扉を開けた須賀さん。

私はそこで何が起きているのか知っているからこそ、逆にハラハラしていた。

だって、もしかしたら修羅場になりえる光景だもん……


「お前ら、ここで何を――――」


案の定、須賀さんの声には一瞬のうちに怒りが滲んだ気がした。

私も確認のために、須賀さん長身の脇から少し顔を出して中の様子を窺うと、そこでは予想通りというか計画通りというか、藤原さんが若葉さんに壁ドンしている最中だった。


お芝居とはいえ、ちょっと、妬ける。


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