キスはワインセラーに隠れて


「お、俺……コレ、自分で……?」


お願いだから、そうだと言ってください……!

いくら男同士だからって、着替えの面倒まで見るなんて、普通しない、よね……?


「俺がしたと言ったら、何か問題あるか?」

「……な、い……です……けど」


明らかに動揺する私に、須賀さんは深いため息を漏らした。



「……お前な。嘘をつくならもっとうまくやれ」



嘘……! ってことは、まさか……

パッと顔を上げた私に、須賀さんは冷静な調子で告げた。



「庄野。……お前、女だな」



――息が止まりそうだった。

どうしよう……ばれた。こんなに、簡単に。

身体を見られたのなら、どんな反論をしても無駄だ。

きっと、須賀さんからオーナーに話が行って、“バレたらクビ”の約束が実行されて……

……ああ、もう、終わりだ。何もかも。


「ごめんなさい……嘘、ついてて。オーナーが女を雇う気がないって面接のときに聞いて、それなら“男としてならいいですよね”って、無理言って働かせてもらってたんです。
……バレたらクビって条件付きで」


自嘲気味に、私はそう語った。

短い間でしたけど、こんな私によくしてくれて、ありがとうございます……

須賀さん、あなたとは、もう少し打ち解けたかったな。

――なんて、心の中でお別れの言葉を彼に伝えながら。


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