光のもとでⅡ
 ……えぇと、
「……ありがとうございます?」
「なんで首傾げて疑問形かな」
 山下くんはくつくつと笑う。
 嫌な予感を覚えつつ、
「交換条件って、何……?」
 山下くんはにこりと笑って、
「ワルツのとき、御園生さんの写真撮らせてよ。ぜひ、この高そうなデジ一で。ズームきくからここからでも寄って撮れそうじゃん? で、あとでデータちょうだい!」
 ツカサに交換条件を持ち出されなかった代わりに、まったく予期しなかったところから交換条件を提示された。
 写真を撮られるということに対して一瞬身構えたものの、自分が躍る予定の場所から観覧席までの距離を考えれば大丈夫な気がしてくる。
 スローワルツとはいえ、曲が鳴っている間は絶えず動き続けているのだ。
 観覧席で誰がカメラを構えていようと、その人に意識を持っていかれることはない。間違いなく、最初から最後までダンスに集中しているだろう。
「だめ?」
 顔を覗き込まれ、私はフルフルと首を振った。
「ダンス中なら大丈夫っ」
 山下くんは口角を上げて笑い、「契約成立!」とデジ一を掲げて見せた。
「御園生さん、そろそろ時間! フロアに下りるよ!」
 風間先輩に声をかけられ慌てると、
「ストップ」
 山下くんに手首を掴まれた。
「急に立っちゃいけないんでしょ?」
「……ありがとう」
「どういたしまして。願わくば、そろそろ真咲くんって呼んでほしいけどね」
 山下くんはバチ、と片目を閉じ、わざとらしいウィンクをして見せる。
 あまりにもウィンクが似合わなくて、思わず吹き出してしまった。
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