光のもとでⅡ
 もう少し詳しく話すにはどんな言葉が適当だろう。
「……自分の気持ちを伝えるのに、『好き』って言葉じゃ足りない気がした。『愛してる』って言葉もなんか違う気がして、もっと――もっとほかの言葉を探してた。でも、見つからなかった」
 自分の中で一番しっくりくる言葉は「愛しい」なわけだけど、この言葉が相手に伝える言葉として正しいのかがわからずにいる。だから、「好き」と口にしたけれど、ひどい嫌悪感を覚えるわけでも抵抗感が芽生えるでもなかった。
 ふと気づくと、俺を見上げる翠が目に涙を滲ませていて焦る。
「本当に、悪い……」
 思わず抱きしめる腕に力をこめると、
「……ツカサ、大丈夫よ? ツカサは好きとは言ってくれなかったけれど、いつだってキスをしてくれたでしょう? 私が好きと言うたびに、ツカサはキスをしてくれたでしょう? だから、気持ちは通じてたよ」
 その言葉に、心の底から救われる。
 伝わっていた……。キスにこめた想いが、きちんと伝わっていた。
 たったそれだけのことが嬉しくて、感極まって目に涙が滲むほど。
 うかがうように俺を見上げてくる翠に、俺は変わらずキスをすることしかできない。
 キスにこめた感謝の想いは伝わっただろうか。
 不安に思いながら翠を見ると、翠は恥ずかしそうに、けれどとても穏やかに微笑んだ。
 その笑顔を見て、翠の持論が少し理解できた気がした。
 確かに、心が「しゅわっ」と音を立てる瞬間はあるみたいだ。
 それは炭酸が水面へ向かって上がっていくような儚すぎる軽やかさと、舌の上ではじけるような刺激を持ち合わせていて、なんとも言えない感覚だった。
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