光のもとでⅡ
「唯、大丈夫だよ。どっちのおじいちゃんもおばあちゃんも、俺が翠葉離れできないことを危惧してるところがあるから、唯が入ることで兄妹のバランスが良くなったことには気づくと思う」
 四人の言葉の中で唯一、あんちゃんが口にしたものには一縷の望みがあった。
 兄妹のバランス、という面においてはきっと一役買っている。「Give and take」から始まった関係だけど、今はこの兄妹に絆を感じることができるから。



 当日――行きの車の中、俺は心臓が口から出そうなほど緊張していた。
 初日に行くことになっていたのは碧さんの実家。
 碧さんの旧姓が「城井」であることは知っていたけれど、アンティーク家具で有名な「城井アンティーク」だと誰が思おうか。
 誰でもいいから俺に入れ知恵してくれる人間がいてもよかったと思う。
 城井アンティークは海外のアンティーク家具を幅広く取り扱い、自社でもアンティーク調の家具を生産販売している。
 家具に興味がない俺が知っている程度には名の知れた老舗家具屋だし、ウィステリアホテルでもその家具を目にすることがあるほどだ。
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