光のもとでⅡ
 たぶん、この人たちがどうでもいい人たちならこんな思いを抱くことはなかっただろう。
 適当にいい印象を与えておけばいい――そう思える人たちならこんなに考え込むことはなかった。でも、ここにいるのは碧さんの両親で、リィとあんちゃんのおじいちゃんおばあちゃんだから。
 自分を受け入れてくれた人たちの家族に嘘はつきたくない。もし、「いい子」の自分を受け入れられたとしても、それは本当に自分が受け入れられたことにはならないし、そんな状況は、どんどん自分が苦しくなる一方だ。
「君は正直な子だね」
「いえっ――」
 咄嗟に反する言葉を口にしたけど、それ以上は何も言えなくて……。
「吉田さん、グラスを」
 おばあさんが声をかけると、お手伝いさんがワイングラスを持ってやってきた。
 差し出されたグラスを持つように言われ、俺はおじいさん直々にワインを注がれる。
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