光のもとでⅡ
「君の事情は碧から聞いている。だが、私は君という人間を知らない。君も私という人間を知らないだろう? 昨日の今日で家族になれるわけじゃない。だから、今日から始めよう。君が歩み寄る努力をしてくれるのなら、私たちからも歩み寄る努力をしようと思う。どうだろう?」
 お互い急には家族になれない。急に何かが変わるわけじゃない。それでも、「これから」を提示してもらえたことが嬉しくて、今の、そのままの俺を受け入れてもらえた気がして、こみ上げるものを抑えることはできなかった。
 年甲斐もなくボロボロと涙を零し、俺の正面に座っていたおばあさんにハンカチを差し出される。
「すみませっ――」
「涙を拭いたら私たちのグラスにワインを注いでくれないかい?」
「はいっ」
 俺は震える手でワインボトルを持ち、おじいさんの持つグラスにワインを注いだ。時計回りでワインを注いで回る際、
「出迎えたとき、すぐに声をかけられなくてごめんなさいね。唯くんのことは碧から聞いていたのだけど、いざ会うとなると緊張してしまって……。何せ、こういった形で新しい家族を迎えるのは初めてだったの」
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