光のもとでⅡ
 彼女に手を差し出したものの、彼女はその手を見てじっと何かを考えているふう。そのあとは、人目を気にしつつも辺りを見渡した。
 これは司を探しているんだろうな……。
「翠葉ちゃん、今はこの手を取って?」
 彼女の耳元で囁くと、彼女は素直に手を預けてくれた。が、俺はその動作だけでは満足できずにもう一言付け加える。
「もういっそのことだから、俺が翠葉ちゃんに求婚していることもばらしちゃえばいいと思ってね」
 それはただ、司から自分へ意識を戻してほしいがために口にした言葉。
 彼女は俺に手を預けたまま固まってしまった。
「じーさんと静さんの庇護下に入り、俺の意中の相手ともなればそれなりの警護がついていることは想像に易い。ともなれば、そんじょそこらの輩はちょっかい出せなくなると思うよ」
 俺はあってもなくてもかまわない説明を補足して、彼女を大藤棚から連れ出した。
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