光のもとでⅡ
 俺が彼女をエスコートするだけで視線が集まる。
 それもそのはず。俺は未だかつて、藤の会で未婚女性をエスコートしたことはないのだから。
 話しかけられれば会話には応じる。が、決して失礼にはならないよう配慮したうえで、エスコートだけは逃れてきた。
 たかがエスコート、されどエスコート。少しでも思わせぶりな態度を取れば、後日間違いなく縁談話が持ち上がる。それが面倒で徹底して避けてきた。
 それができない楓は、藤の会のあとは毎年縁談の嵐。
 今思えば、毎年冷たい目で見られる季節でもあったな。
 しかし、それも去年までの話。楓は今年の二月に入籍し、今では立派な妻帯者。さらには、七月には子どもが生まれて父親になる。
 先を越されたな……。別に競っていたわけでもないけれど。
 隣を歩く彼女はまだ緊張の中にあり、辺りの藤を見ることすらできていない。
「翠葉ちゃん、見てごらん。藤がきれいでしょ? 今日の青空に良く映えると思うんだけど?」
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