光のもとでⅡ
「学校ではこんなふうにキスしたり抱きしめたりできないでしょ?」
 桃華は俺が何を言いたいのかがわからないらしい。「どういう意味ですか?」という視線を向けられ、
「つまり、司は衝動を抑えるのに必死なんじゃないかな? だから、翠葉と少し距離を置いてる。でも、距離を置くこと自体は本意じゃないから不機嫌。……わかってもらえた?」
「……なんとなく」
「……なので、ふたりでなんとか切り抜けてもらうしかないよね?」
 手をつなぎなおして散歩を再開する。
「でも、翠葉……大丈夫なんでしょうか?」
「うーん……どうだろうね。秋斗先輩とのときは怖いって逃げちゃったけど……」
 そんな過去があるからこそ司は慎重になるのだろうし……。
「桃華がさっき言ったことと同じことを言えたらいいよね」
「え……?」
「ほら、司に対してはいやらしいって思っちゃったけど、俺に対しては思わなかった、って言ったでしょ?」
「あ……」
「つまり、そういうこと。司なら大丈夫、って思ってくれるといいよね」
 夕方までみっちり翠葉と司の話をすることになるかと思っていたけれど、そんなことにはならなかった。
< 416 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop