光のもとでⅡ
 気持ちを落ち着けるように、部屋にあるものへと視線を移す。
 ツカサの部屋には進学に関する資料は一切置かれていない。壁一面の本はすべて医学書の類で、まるでお医者様のお部屋のよう。
 そんな部屋のデスクに一冊の文庫本を見つけた。
 手に取ると、「星の王子様」であることに驚く。
 どうして星の王子様なんだろう……。
 そんなことを疑問に思っていると、お茶をトレイに載せたツカサが戻ってきた。
「高崎さんに訊きたいことってなんだったの?」
「あ、お仕事のこと。将来の夢とか、進路とか、そういう話を訊きたくて」
「話を聞いて、何か見出せたわけ?」
「……まだ、どの方向へ行くかは決められていないの。でも、今始めないと受験に間に合わなくなるものがあることには気づけた。だから、ピアノとハープのレッスンを再開することにしたんだ。それから、日曜日は高崎さんのアシスタントをして、植物のことを教えてもらえることになった」
「……ってことは、音大と写真学科、園芸学科あたり?」
「うん。まずはこの近辺にある学校を調べて、資料請求しようかなと思って」
「倉敷音大なら茜先輩の進学先だし、音楽の蓮井先生の出身大学でもある。話を聞くことはできるんじゃない? それから、久先輩が葉山大学の写真学科、夜間に通ってる。こっちも話を聞くことはできると思う」
「ありがとう。先輩たちに連絡取ってみる。どこへレッスンに行くかもまだ悩んでいるから、蓮井先生に相談してみようかな」
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