光のもとでⅡ
「来年も七夕祭りがあるのなら、来年はどんな願いごとを書く? 私は何をお願いしようかな」
 翠は足取り軽やかに嬉しそうに話す。
「今日の願いごとを変えるつもりはない」
「……今日の願いごと、なんて書いたの?」
「それ、俺が教えたら翠の願いごとも教えてもらえるの?」
 翠は真顔になって少し考えた。結果、
「秘密。だから、ツカサも言わなくていいよ」
 翠はスキップするように俺の前へ出る。
 やめろ……前に行くな。俺に後ろ姿を見せるな。
 そんな思いで腕を引き寄せる。
「ん? 教えてって言われても教えないよ?」
「訊かない。でも――」
「……でも?」
「インターハイで優勝したら、願いごとを聞いてほしい」
「え……?」
 翠は少し間を置いてから、
「今日の願いごとの内容を教えてくれる、ということ?」
「違う。今日の願いごとは関係ない。叶えてほしいのは別のこと」
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