光のもとでⅡ
 調弦が済むとハープをかまえ、
「それでは、即興で……」
 と、馴染みある曲を奏でてくれる。
 小さい頃、実家で七夕祭りをしたことはあるし、幼稚舎でも初等部でも七夕祭りはある。ときに、楽器の演奏を聴いたこともあったけれど、ハープの演奏は初めて。
 翠葉ちゃんが爪弾く音は、とても優しい澄んだ音色だった。
 曲がリピートされたとき、果歩ちゃんが七夕様の歌詞を口ずさみ、私もつられて歌を歌った。
 和やかで幸せを感じられる時間。湊と静くんも来られたらよかったのに……。

 翠葉ちゃんの演奏が終わると締めの花火が始まる。
 今日はお父様も誘ったけれど、バーベキューと花火、という煙の上がる行事に「遠慮する」と断られてしまった。でも、来なくて正解だったかもしれない。
 果歩ちゃんと楓が次々と花火に火をつけるものだから、あっという間にお庭は煙が充満してしまったのだ。
 少し離れたところでは、翠葉ちゃんもケホケホと咽ている。
「涼さん、翠葉ちゃんが――」
「司がついています。このくらいのエスコートはできてしかるべきでしょう?」
「……そうですね」
 しばらくすると、翠葉ちゃんの咳は聞こえなくなった。
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