光のもとでⅡ
「翠葉ちゃん、考えてること、口にしてごらん? なんか、今の翠葉ちゃんは放っておいたらパンクしちゃいそうな顔をしてる。……でも、まずは歩くの再開ね? 人は留まっているよりも、歩いているときのほうが考えがまとまるものだよ」
 優しく促され、秋斗さんに手を引かれるままに足を踏み出した。

「さ、何を考えているのかな。気まずいと思うなら、俺がひとりで行ってくるよ」
 こういうとき、咄嗟に「違う」と口にしてしまう自分がずるいと思う。
「何が違うの?」
「……秋斗さんとふたりになることは気まずくないけど気まずいです」
「それ、よくわからないな」
「……自分がずるいことでツカサを不安にさせちゃうのが嫌です」
 ものすごく端的な言い方だと思う。でも、全部をさらけだすことはできなくて、これ以上細かく話すのは無理だったのだ。
 それでも、秋斗さんはわかってくれてしまうから困る……。
「君は優しいからね……。俺のことを完全に拒みはしない。それが、司にとって不安要因になってるってことかな」
 携帯のストラップやそういう部分では何を迷うことなくツカサを選べる。でも、気持ちそのものだと困ってしまう。こういうの、みんなはどうしているのかな……。
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