光のもとでⅡ
「秋兄の手癖の悪さはよく知っているし、翠の無防備っぷりも理解してる。だからこそ気をつけてほしい。うっかり抱きしめられたり、うっかりキスされたり、そういうのはなしにして」
 束縛以外の何ものでもない。それを翠はどう感じるだろうか。
 不安に思いながらも、
「……もし、そういうことがあったら隠さず白状して」
 止めを刺すようなことしか言えなかった。
 翠はコクリと頷いた。そして、
「ツカサ、ごめん……。海水浴に行ったとき、唯兄も一緒だったけど、海に入るのが怖くて秋斗さんに抱っこされた……。それから、お昼食べたあと、秋斗さんとふたりきりになった。浮き輪を借りに行くだけだったのだけど、手、つないじゃった……」
 なんとなくそんな予感はしていて、やっぱり、とため息が出る。
「力の関係上、手をつながれたら翠から振り解くのが難しいのは理解してる。でも、これからはそういうのもなしで」
「……はい」
 しゅんとしている翠を見て、今後は大丈夫なのだろうか、と心配になる。けど、その前に――。
「つないだ手ってどっち?」
「え……? こっち」
 翠が右手を上げたのを確認して、その手首を掴み口元へ引き寄せた。
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