光のもとでⅡ
 ほかにはどんなたとえ方があるだろうかと考えていると、
「私もいつかは恋ができるかしら……」
 雅さんは宙をぼんやりと見つめる。
 私は何か言葉を添えたくて、
「『いつか』はきっと来ると思います」
 雅さんは恥ずかしそうに笑った。
「知らない感情を知るのは、少し楽しみで、少し怖いわね……」
 その言葉に共感する。
 未知のものと対峙するとき、必ずしも好奇心だけとは限らない。時に恐怖心や不安感を抱く。
「『いつか』が来たら、お話聞いてくれる?」
「私でいいんですか……?」
「もちろん。こんなお話ができるのは、ホームステイ先の先生と翠葉さんくらいだわ」
「……その日が来ることを楽しみにしています」

 そんな話をしていたら、あっという間に時間は過ぎて九時半を回っていた。
「そろそろお暇するわね」
「とても楽しかったです。時間が過ぎるのあっという間で……」
「本当に。帰国した際にはまた会っていただけるかしら?」
「もちろんです」
 にこりと笑った雅さんはバッグから携帯を取り出し秋斗さんに電話をかけた。
 どうやら、ホテルへ戻る際にも秋斗さんが送ることになっているらしい。
 その間、私はツカサに連絡を入れた。
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