光のもとでⅡ
「あのさ、俺、免許取れたんだけど……」
「免許が取れるというのは必要最低限のことを学んだに過ぎない。決して運転レベルが高度であることを保証されたわけじゃない」
 司は面白くないといった顔つきで運転をしていた。が、別段運転が荒れることはなかった。このくらいの不機嫌は運転に現れないらしい。
「近場ならかまわないが、遠出のときは運転の予習をすること。じゃないと車は貸さない。楓や湊にもそう伝えておく」
「……わかった」
「でも、なんだか不思議ね。一番小さかった司がもう運転できる年だなんて」
 しんとした車内に真白さんの柔らかな声が響く。
 司は機嫌が悪いのか返す言葉がとくにないのか、何を答えるでもない。
「そうですね。司が十八……私たちも年をとるはずです」
「本当に……。ねぇ司、海浜公園には何があるの?」
 司は少し考えてから、
「一番大きな施設は水族館だと思う。でも、今は改修工事中だから入れない」
「……なのにそこへ行くの?」
「……水族館のほかに、散歩できるスペースがあるんだ。植物がたくさん植わってるみたいだから、翠は喜ぶかと思って……」
 御園生さんが喜ぶから……か。
 他者に関心を示さなかった司が御園生さんという恋人を作り、その人のために、と物事を取捨選択している。その姿が、妙に微笑ましく思えた。
 もっとも、自分の血を色濃く継ぐ司に特定の相手ができるのはもっと先か、望めないと思っていただけに、人生とはわからないものだ。
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