光のもとでⅡ

Side 翠葉 04話

 物事が決まってからのスケジュールは思ったよりも過密なものだった。
 紅葉祭のときと変わらないと思ったけれど、よくよく考えてみたらずいぶんと違う。
 応援団の練習を歌の練習に置き換えると、新たに加わったのはふたつ。
 ダンスの練習と衣装の製作。それらが加わるだけでぐっと負担が増えたように思う。
 それでも、私が出る競技の練習は応援団とダンスのみ。ほかの人と比べたら間違いなく楽なはずなのだ。
 月水金は授業のあとに一時間半応援団の練習に参加して、帰宅したら少し休んで夕飯を食べ、お風呂に入ってから会計の仕事、そのあとはツカサと勉強。
 火曜日は病院へ行って、帰宅したら少し休んで夕飯を食べたあとにお風呂。会計の仕事のあとはツカサと勉強。
 これらをクリアしつつ、そこまで得意ではない裁縫という作業をしなくてはいけない。
 事態を知った高崎さんが里実さんに話してくれて、ミシンを借りられることになった。しかし、長ランの内布とハチマキの生地には刺繍を施さなくてはいけない。その部分だけはどうあがいても自分の手でするしかないのだ。
 里実さんは手先が器用らしく、「手伝おうか?」と申し出てくれたけれど、ジンクス如何どうあれ、この作業を人にお願いするのは気が引けて、私は口元を引きつらせながら「自分でがんばります」と答えるに留めた。
 縫い物の作業にかまけて会計の作業が滞るのは絶対に許されない。かといって、ほかの組の団長であるツカサの長ランが期日までに作り上げられないのも困る。
 私は相馬先生にごめんなさい、と思いながら、日をまたいでも縫い物をする日々を過ごしていた。
< 771 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop