光のもとでⅡ
 そんなある日、応援団の練習で貧血を起こした私は保健室へ運ばれた。
 単なる貧血だったら良かったのだけれど、思い切りブラックアウトして意識を失ってしまったのだ。
 意識が戻ったときには情けなさでいっぱいだった。
「副団長なんて務まらないよ……」
 泣き言が口から漏れる。
 紫苑祭では、紅葉祭以上に体力を求められている気がしなくもなく、そんな渦中に自分が立っていることが分不相応に思えてきてしまったのだ。
 曲を考慮してもらったダンスも、今となっては週に数回ある練習が負担でしかない。
 シャッ――カーテンが開き湊先生が顔をのぞかせる。
「起きた?」
「はい……」
「何泣いてんのよ」
「……私、副団長なんて無理です」
「そんなこと言ったって、もう決まったことでしょ?」
「そうなんですけど……」
「衣装作りだって始まってるんだろうから、今さらあーだこーだ言うほうが迷惑よ」
 その言葉に、ぐ、と堪える。
 そうなのだ。状況的にはすでに引けない場所まできている。断るならば、任命されたあの時点でしっかり断らなくてはいけなかった。
 悔いるくらいなら踏ん張れ――。
 一度奥歯に力をこめ、
「先生、私、帰ります。帰って仕事しなくちゃ」
「……がんばりなさい。でも、根詰めすぎないように」
「はい……」
< 772 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop