光のもとでⅡ
 そう言うくらいには、自分の指にプスプスと針を刺してしまった痕がある。
 ツカサは私の指先を見て、堪えられないというふうに笑った。
「ツカサ、ひどい……」
「悪い……」
 言いながらもまだ笑いはおさまらない。
 こんなふうに笑うツカサは初めてで、面白くないと思う反面、貴重なツカサが見られて嬉しかった。
 授業の間の時間を利用して刺繍をしていることを話したら、
「授業始めの小テストは?」
 と、そこを心配された。
「毎日ツカサに見てもらってるから大丈夫。今のところ失点はしてないよ」
「ならいいけど、失点するようなら授業間の休み時間は勉強に当てること」
「うん。そうならないようにがんばる」
 ひとりで勉強していると、キリキリと切羽詰まるものがあるけれど、ツカサとの勉強はこんな会話をはさみつつなので、ちょっとしたリラックス効果もあわせもっていた。
 そして、帰る間際にはキスをしてくれる。それは、「今日一日がんばりました」のキスにも思えたし、「明日も一日がんばろう」のキスにも思えて、私にとっては特別度の高いキスだった。
 ねぇ、ツカサは何を思ってキスをしていたのかな。こんなふうに思っているのは私だけなのかな。
 ねぇ、ツカサは何を思ってキスをしたの?
 いつか訊ける日が来るだろうか。
 そんなことを考えながら眠りの淵に落ちる日々は、とても幸せなものに思えた。
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